誤食

1. 異物の誤食

異物の誤食は動物病院でみられる発生頻度の高いトラブルの一つです。

犬では特に食餌をよく噛まずにある程度の大きさのものは丸のみする習性があります。
犬がよく誤食する一般的な物としてボール、おもちゃ、布、靴下、ロープ、石、果物の種子、ビニール、竹串、針等があります。
ときには食餌とともに摂取された鋭利で硬い竹串や鶏の骨、魚骨、釣り針、縫い針が食道壁に刺さり、それが食道に詰まることもあります。
特に鳥の骨は豚や牛に比べて断端が鋭利なため、食道壁を穿孔し、食道裂傷の原因になることがあります。

猫ではおもちゃや紐状異物の誤食が多くみられます。薬剤等を誤食するケースもあります。
異物を誤食した場合は症状がすぐに現れなくても時間が経過することで状態が悪化し治療が困難になっていく可能性があります。
そのため誤食した場合はすぐに来院していただき治療を相談させていただく必要があります。

誤食

2. どのような症状がおきますか?

異物は大きさや形状によってうまく通過できない場合は胃や腸に詰まってしまうため、それにより消化器症状を引き起こします。
悪心、嘔吐、食欲低下、腹痛、元気消失が主な症状です。完全閉塞もしくは穿孔の場合はショック症状がみられる場合もあり症状が悪化します。
また薬物などを誤飲した場合は薬物の種類によっては消化器症状だけでなく肝臓や腎臓等にも負担をかけるため注意が必要です。

3. 検査について

異物の存在を調べるにはX線検査、場合によって造影X線検査を行います。X線で異物がうつる場合もありますが、うつらないこともあります。
うつらない場合でも、ガスの貯留や腸に異常がないかを確認します。また当院では超音波検査も合わせて行っています。
超音波検査でも直接異物がうつらないこともありますが、異物の前方で蠕動の低下や液体が貯留するなど、異物を疑う所見がないかを確認します。

4. どのような治療を行いますか?

対処法は主に4つに大別されます。

異物が除去されるまで支持療法

サイズが小さいもので胃や腸を通過する可能性が高い場合は点滴や治療を行いながら便からでるのを待つ場合があります。
ただし途中で閉塞する場合や鋭利なものでは途中どこかで穿孔したりする可能性があり経過を見ることで状態が悪化する場合もあります。

催吐処置(吐かせる処置)

誤食してから時間が経っておらずまだ胃の中に異物がある場合は催吐させます。
しかし鋭利なものやサイズが大きく催吐するリスクが高い場合は催吐させることができません。
当院では止血剤(トラネキサム酸)を急速に静脈内投与し、その副作用として嘔吐を誘発する方法を用いています。
止血剤として使用する量よりも高用量を投与します。
トラネキサム酸の血液凝固促進作用によってトラブルがおきたことが当院ではいまのところなく、従来のオキシドールによる催吐処置よりも胃が荒れることを防げるので負担が少ないと考えています。

全身麻酔による内視鏡

内視鏡とは先端にレンズのついた管を口の中から入れて体の中をモニターで観察しその場で処置・治療をする医療機器のことです。
レンズのついた細い管は直径一センチ弱の柔らかい管でその先端は手元の操作で上下左右に動くようになっています。
そのため、消化管のような曲がりくねったところにもスムーズに入っていくことができます。
鉗子などの器具を入れるための穴があり、異物の場所が特定できたら鉗子を挿入し異物をとります。
内視鏡で取れない物もありますが、取れる場合は開腹手術をしなくて済むので動物の体への負担を最小限に抑えることができます。基本は日帰りで治療が可能です。

外科手術(開腹手術)

内視鏡でも取り出すことが難しい、また危険な場合やすでに小腸まで移動している場合は開腹手術が必要になります。
異物の存在する胃や腸の一部を切開し異物を摘出します。
閉塞期間が長い場合や消化管の損傷が著しく壊死を起こしている場合などは消化管の一部の切除・吻合が必要となります。
手術後はすぐに飲水や食事をとることはできないので、当院では5日~1週間の入院となり治療をしていきます。

5. 最後に

誤飲誤食はさせないことが基本ですが、万が一してしまった場合はできるだけ早くかかりつけの病院へ行きましょう。
また食べてしまったものがどのようなものかを正確に伝えることも重要です。誤食してしまったものと同じものがあれば持参するようにしましょう。

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