胆嚢粘液嚢腫
1. 胆嚢ってどんな臓器??
胆嚢は肝臓で作られた胆汁を一時的に貯蔵、濃縮する働きをしています。胆汁は脂肪を消化するために必要な緑色の液体のことです。
体内に取り入れた食べ物が十二指腸に到達すると胆嚢が収縮し、胆汁は総胆管をへて十二指腸へ送り出されます。
腸に送り出された胆汁は食べ物と混ざり脂肪分を乳化させ、腸からの脂肪吸収を助けます。
2. 胆嚢粘液嚢腫ってどんな病気??
胆嚢の中にゼリー状の粘液物質が貯留した状態をいいます。
初めは胆汁が泥状になる胆泥症がみとめられ、進行すると粘度が増してゼリー状になり粘液嚢腫とよばれます。
胆汁の分泌が障害されるため胆汁が蓄積して胆嚢炎を起こしたり、進行すると黄疸がでたり胆嚢破裂に伴う腹膜炎など重篤な合併症を引き起こします。
3. どのような症状がおきますか?
胆嚢粘液嚢腫は長期経過を取ることも多く、初期には無症状です。
胆汁の分泌障害により嘔吐や下痢、食欲不振、腹痛などの慢性的な消化器症状がみられ肝障害を併発する場合もあります。
また胆嚢炎や胆嚢破裂の場合は重篤な症状が現れ、特に胆嚢が破裂した場合は、胆汁による腹膜炎によって命に関わる状態になります。
胆嚢が破裂するまで、もしくは破裂する寸前まで特異的な症状がみられない場合もありますので注意が必要です。
4. どのような検査を行っていますか?
当院では血液検査とX線検査と超音波検査を行っています。
臨床症状が全く認められない状態では血液検査に異常がみられないことも多く、超音波検査で偶発的に診断される場合がほとんどです。
症状がみられるような胆嚢粘液嚢腫の犬の場合、血液検査では白血球の増多、肝酵素(ALT,AST,ALP,GGT)上昇、高ビリルビン血症、CRPの上昇がみられることがあります。
腹部超音波検査ではゼリー状の内容物を伴う胆嚢が見られ、キウイフルーツの輪切りや星形など極めて特徴的な模様が見られる場合があります。
5. 治療法はあるの?
症状を呈している場合は胆嚢摘出、総胆管の閉塞解除といった外科的治療が必要となります。
手術を乗り越えたものでは予後が良好な反面、症状を発現して来院する動物は胆嚢破裂などによる腹膜炎など深刻な病態であることが多く、周術期死亡率は17-40%とかなり高いことが報告されています。
無症状の場合は今後症状を呈する危険性があることを考慮して早期に胆嚢摘出を実施するか、内科治療を併用します。
内科治療では利胆作用や肝臓保護作用を期待してウルソデオキシコール酸を投与し、抗菌薬を併用します。また低脂肪食を中心とした食事へ変更します。
脂質代謝異常が起きるような基礎疾患がある場合は積極的なホルモン補充療法を行います。
内科療法で管理できる場合もありますが、徐々に進行してくる可能性もあるため定期的な検査による経過観察も必要です。
6. 最後に
初期の場合は無症状で検査をしない限りは見つからないことも多い病気です。早期発見、早期治療が重要となります。
中高齢犬に多く発生しますので、一度健康診断も兼ねて病院での検査をお勧めします。