乳腺腫瘍

1. おなかにしこりが!!ワンちゃんの乳腺腫瘍ってどんな病気?

先日、おなかにしこりができているというワンちゃんが来院されました。
体表にできる腫瘤にはいろいろな種類のものがありますが、今回診察したところ乳腺のところに大きな腫瘤ができていました。
その子は避妊手術をしておらず、腫瘤の場所から乳腺腫瘍の可能性を疑い診断、治療を進めていくことになりました。

今回は私たち獣医師が日常診察で遭遇することが多い乳腺腫瘍についてお話しをします。
犬と猫では病態が異なるため、今回は犬の乳腺腫瘍についてのみのお話しになります。猫ちゃんはまた今度お話ししたいと思います。

乳腺腫瘍

2. 犬の乳腺腫瘍ってどんな病気?

犬の乳腺腫瘍は雌犬に発生する腫瘍の中で最も多くみられるもので、犬に発生する腫瘍全体の25-50%を占めるといわれています。
また乳腺腫瘍の1%未満ですが、雄にも発生することが分かっています。未避妊の雌は避妊済みの雌に比べて乳腺腫瘍の発生リスクはなんと7倍ともいわれています。

平均年齢は10-11歳で好発犬種としてプードルやテリア種、コッカースパニエル、ジャーマンシェパードドッグ等が初期の研究ではよく記載されていましたが、最近ではチワワやボクサーで発生が少ないとの報告があり、見解が一致しないところもあり意見が分かれています。
この犬種だから乳腺腫瘍にならないというのはないので、どの犬種も注意が必要です。良性と悪性については約50%が悪性でありさらにその50%が転移をおこすともいわれています。

3. 避妊手術をすれば乳腺腫瘍にはならないって本当ですか??

答えはNOです。ただし乳腺腫瘍はホルモンの影響を確実に受けることが知られているので、特に若齢期に避妊手術を受けることで発生率が劇的に低下します。
避妊手術を初回の発情前に行った場合、乳腺腫瘍が発生するリスクは0.05%、初回と二回目の発情の間に行った場合は8%、二回目の発情以降に行った場合は26%です。このことから乳腺腫瘍の発生を抑えるためには二回目の発情までに避妊手術を行うことが効果的です。

4. 診断から治療のながれについて

診断するために細胞診という針で細胞をとる検査を事前にする場合もありますが、確定診断をするためには手術を行い、切除した組織を病理検査に送ります。
病理検査を行うことで腫瘍の悪性度やリンパ管や血管への浸潤の有無をみることができるので今後の治療法が決まります。
治療はその子の状態によっても異なるためここでは詳しくは説明できませんが、良性の場合は手術後特に治療が必要にならない場合もあります。ただし新たなしこりができてこないか経過を見ていく必要はあります。
また悪性の場合は抗がん剤等の治療が必要になるため通院が必要になります。

5. 手術が不安です!

当院では手術ができるかどうかをみるための術前検査をしっかりと行っています。
術前検査では血液検査やレントゲン検査、超音波検査等を行っています。
万が一、手術ができないと判断した場合でもその子それぞれに寄り添った治療を提案させていただくので安心してください。

6. 最後に

万が一腫瘍ができても早期発見することが大事です。全ての雌の成犬、特に未避妊の雌犬では定期的に乳腺を触診する必要があります。
あれ?しこりかな?と思うなものを見つけた場合は是非一度来院していただき、直接獣医師にご相談ください。

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