尿路結石・尿石症
(尿管結石、膀胱結石、尿道結石)

1. 尿路結石症ってどんな病気?

尿路結石は腎臓から尿管、膀胱、尿道の尿路にかけて結石が存在している状態です。
結石ができてしまう原因や機序にはまだ不明な点もありますが、猫の食生活や生活習慣も大きく関わっていることがわかっています。
尿のphがアルカリ性や酸性に傾きすぎたり、尿中のミネラル成分が増加したり、水分摂取量が少ないと尿量が減少するため結石の基となる結晶が析出しやすくなると考えられています。また遺伝的な要因や基礎疾患(先天性代謝異常、肝臓病、腎臓病等)があると結石ができやすい場合もあります。

2. 結石にはどのような種類がありますか?

猫の尿路結石の成分で最も多いのはリン酸アンモニウムマグネシウム(ストラバイト)結晶とシュウ酸カルシウム結晶の二つです。
この二つが90%以上を占めると言われています。他にも尿酸アンモニウム、シスチンといった結石もあります。
結石のサイズは存在する部位にもよりますが、1mm以下の非常に小さいものから数㎝もある大きなものまで様々です。
結石は腎臓あるいは膀胱に形成されるため、腎臓で形成された結石が尿管に移動すると尿管結石となります。
また膀胱結石が排尿とともに尿道に移動すると尿道結石となります。尿管や尿道が結石により閉塞すると尿の流れが滞り、その上部(尿管であれば腎臓、尿道であれば膀胱)に損傷を与える原因となります。
昔は膀胱結石や尿道結石が多いとされていましたが、最近では腎結石や尿管結石の発生も増加傾向にありそのほとんどはシュウ酸カルシウム結石です。

3. どんな症状がおきますか?

尿路結石が存在している場所によって異なります。
腎結石の場合は持続的な血尿がみられる程度で大きな臨床症状がみられない場合も多いので検査をしない限り気づかないことも多いです。
膀胱結石の場合は頻尿や血尿が主な症状ですが、あまり症状が目立たないこともあります。
尿管結石では目立った症状がなく経過する場合もありますが、結石による尿管閉塞の場合は腹部を触ると痛がったり、元気消失や嘔吐がみられたりと症状も様々です。
尿道結石の場合は血尿、頻尿に加えて不適切な場所での排尿、排尿困難(排尿しようとしても尿がでない)、排尿に伴う痛みといった排尿に伴う症状がでることが多いです。両側の尿管や尿道閉塞では全く排尿できない時間が長く続くため、発見、処置が遅れると腎後性急性腎障害の臨床徴候が急激に発現します。
尿毒症に陥ると嘔吐、下痢、脱水、沈鬱、口臭、腹痛、尿が出ないまたは少ない状況になり、進行するとショック、痙攣、徐脈や不整脈が見られ死に至る場合もあります。特に結石による尿道閉塞は若い雄猫に多い疾患なので注意が必要です。

4. 検査および診断

身体検査、尿検査から開始するのが一般的ですが、排尿障害がある場合は症状が進行し、重篤となるため血液検査も同時に行います。
排尿がほとんど認められず血中尿素窒素(BUN)、血中クレアチニン濃度(Cre)、血中カリウムイオン濃度が上昇していたら完全な尿路閉塞を疑います。
閉塞の経過時間によりますが、高カリウム血症は致死的な状態に陥る可能性が高いため、早急な対応が必要です。
そのほかにもX線検査では描出されない結石もありますが、シュウ酸カルシウムであれば比較的小さくてもX線にうつることがあります。
その他にもX線では腎臓の陰影が正常よりも大きくなってないどうか、左右差がないかどうかも確認することができます。

5. 治療法はあるの?

小さなストラバイト結石は適切な食事療法によって溶解する可能性もありますが、シュウ酸カルシウム結石は内科療法で溶解することができません。
膀胱結石は手術によって摘出することが推奨されます。尿道結石も一度膀胱に押し戻して膀胱から摘出しますが、その際尿道が強く損傷を受けた場合には尿道を広げたり、開口部を変更したりする手術を行う場合もあります。
猫の腎結石は手術が難しい場合も多いですが、尿管結石はその数や尿管の閉塞状況にもよりますが、手術によって結石を摘出することもあります。
尿管閉塞を起こして腎臓に負担がかかってしまった場合はブログでも以前にご紹介したSUBシステムの手術を行います。
閉塞した尿管とは別の尿の迂回路ができることによって腎臓の負担を軽減することができます。詳しくは1月のブログをご覧ください。

6. 予防が重要です!

尿路結石は再発しやすい病気であるため、予防が重要となります。予防には適切な食事管理が必要です。
結石の成分となる物質を制限し、尿のphを結石のできにくい範囲にします。
食事も様々な種類がありますので獣医師に直接相談していただき、継続して食べられるものを探しましょう。
食事がどうしても変更できない場合はサプリメント等を併用し、結石の成分ができにくくなるようにします。
定期的に尿検査や超音波検査を行い、経過をみることが大事です。
また充分な水分摂取も大事になるので水を常に絶やさないようにし、数か所水飲み場を作るなどして工夫します。
トイレを我慢しないよう常に清潔にして快適な排尿をさせます。
肥満も要因の一つと言われていますので太りすぎないようにこころがけましょう。

7. 最後に

血尿や頻尿などの排尿トラブルがみられた場合は是非一度来院していただき、検査を受けることをお勧めします。
またおしっこが全く出ていない場合は緊急性が高いため、すぐ病院を受診してください。

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