SUBシステムによる尿管閉塞の手術
1. 画期的なSUBシステム
尿管は腎臓で作られた尿を膀胱まで運ぶ管です。この尿管が結石や腫瘍など様々な原因によって詰まってしまうことを尿管閉塞と言います。
尿管閉塞が起こると尿の流れが阻害され、腎不全が生じ命に関わることがあります。
内科的に治療困難な場合、従来では腎機能の喪失によって命に関わることが多くありましたが、SUBシステムを用いた手術の開発によって命を救うことができるようになりました。
2. 腎臓って何をしてる?腎不全?尿管閉塞?
腎臓は体内を流れる血液から悪い成分を分離して尿として排出する働きを持っています。
腎臓自体に疾患があり正常な尿を作れなくなると、良い成分を尿に出したり、悪い成分を体内に残してしまうようになり、この状態を腎不全と言います。
また、腎臓自体は正常であっても、腎臓で作られた尿を膀胱まで運ぶ管である「尿管」が詰まってしまうことによって腎不全が起こります。
尿管が詰まっている時間が短いと腎臓の機能が回復する可能性がありますが、詰まっている時間が長いと回復できなくなります。
3. SUBシステムについて
SUBシステムは腎臓と膀胱をつなげるシリコンカテーテルと、そのカテーテルを洗浄する時に使用するポートと呼ばれるチタン製の金属からなります。
これらによって尿管とは別に尿の迂回路を作成します。
閉塞した尿管とは別の尿の迂回路ができることによって腎臓の負担を軽減することができます。
カテーテルはお腹の中(内臓と一緒の場所)にありますが、ポートは皮膚の下に設置します。
これは定期的にポートから洗浄液を注入し、カテーテルがつまらないようにするためです。
カテーテルの洗浄は手術から1週間後(入院中に実施)、1ヶ月後に実施し、その後は状態によりますが3ヶ月に1回程度の洗浄を実施します。
洗浄には麻酔は必要ありませんが清潔な処置が必要となるため場合によっては鎮静剤を使用して実施することがあります。
4. SUBシステムといえど万全ではありません。
残念ながらSUBシステムの手術をしても回復しない場合や、何らかの症状が持続することがあります。
主に以下のような注意事項が挙げられますので確認してください。
- SUBシステムの手術を実施しても尿管閉塞による腎臓への負担が大きい場合は腎機能が改善しない場合があります。
- 物理的な刺激や腎臓の機能低下により手術後に貧血を起こしたり、血尿や排尿時の疼痛が持続する場合があります。これらの症状は徐々に悪化したり、長期間持続する場合があります。
- 手術した場合、平均すると1週間程度の入院が必要となります。また、退院後も定期的な診察や治療が必要となります。通院の間隔は状態によりますが、退院直後はなるべく間を空けずに通院していただくことが必要です。
- 原材料費が高価なため、通常の手術と比較すると手術代が高くなります。
- カテーテルは劣化や閉塞によって数年後に交換が必要な場合があります。
5. まとめ
以上、SUBシステムに関してざっくりと説明させていただきましたが、いかがでしたでしょうか。
獣医療も日々進化しており、治せなかった病気への新しい治療法が出てきています。
当院としましても新しい治療法や負担の少ない治療法などを積極的に取り入れていきたいと考えていますので、このブログでご紹介していきたいと思います。