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2020.12.24
ネコちゃんの病気内分泌科
ネコちゃんの甲状腺機能亢進症について

こんにちは。野並どうぶつ病院の病院ブログをご覧いただきありがとうございます。このブログではワンちゃん、ネコちゃんの病気や病院で行っている手術についてご紹介していきます。今日は「甲状腺機能亢進症」とういうネコちゃんの病気についてお話しをします。

 

 

まず初めに甲状腺は喉のやや下の左右にあり、代謝に重要な甲状腺ホルモンを分泌する臓器です。生命の維持に極めて重要な役割を担っています。甲状腺機能亢進症は甲状腺から過剰な甲状腺ホルモンが分泌されることによって引き起こされる病気です。10歳以上の高齢な猫ちゃんでしばしばみられる慢性腎臓病とならぶ代表的な病気の一つです。今日はそんな猫ちゃんの「甲状腺機能亢進症」という病気についてお話しをします。

 

1、「甲状腺機能亢進症」ってどんな病気?

甲状腺の良性の腺腫性過形成、腺癌によって甲状腺ホルモンが過剰に分泌する疾患です。腺腫性過形成が多く、悪性腫瘍(腺癌など)は2%未満とされています。今現在のところ甲状腺が過形成に発展する真の原因は明確には解明されていません。感染や代謝、環境や遺伝等が相互に作用していると考えられます。

 

2、どんな症状がおきますか?

典型的な症状としては体重減少、多食、活動性の亢進等があり、その他にも被毛の変化や多飲多尿、嘔吐、下痢、頻脈、高血圧といった様々な臨床徴候を示します。その症状は多様ですが、なかでも食欲低下を伴わない体重減少や多飲多尿、活動性の亢進等が特徴的な症状として挙げられます。食事量が低下しないために飼い主様には病気とはとらえにくく、なかなか病気に気づかないこともあります。

 

3、どのような検査を行いますか?

身体検査では脱水や削痩、被毛の変化が見られることが多く、頸部には大きくなった甲状腺を触知することができます。ただし触知できるのは20-30%以下との報告もあるので必ず触知できるわけではありません。また血液検査ではALPやALTといった肝酵素の上昇が多くの症例で認められます。診断は甲状腺ホルモン(血清T₄濃度)を測定します。典型的な症状を伴いT₄濃度が高い場合(5μg/dl)はほぼ甲状腺機能亢進症と診断することができます。また軽度の甲状腺機能亢進症や腫瘍や全身性の感染症、臓器不全では正常な血清T₄濃度を示すこともあり、診断ができないことがあります。そのため一回だけの検査結果では血清T₄濃度が「正常値」を示しても甲状腺機能亢進症を除外することはできません。場合によっては追加のホルモン検査や、間隔をあけて再度数値を測定する必要があります。

 

4、治療法はありますか?

猫の甲状腺機能亢進症の治療法は次の3つに大別されます。

  • 経口抗甲状腺薬
  • 甲状腺摘出手術
  • 放射性ヨード療法

 

一つ目は抗甲状腺薬の経口投与です。抗甲状腺薬を投与し甲状腺機能亢進症により代謝や循環に起こる様々な障害からの回復を図ります。薬の作用は甲状腺ホルモンの合成阻害なので生涯投薬を継続する必要があります。また副作用がでることもあるので定期的に甲状腺ホルモンの測定を行い、症状を観察しながら投与量を調節していく必要があります。また近年ヨードを制限した療法食(ヒルズ社のy/d)の発売によって食餌療法により甲状腺機能亢進症をコントロールするという選択肢も増えましたが、内科治療のほとんどは抗甲状腺薬によって行われています。

二つ目は外科的治療(甲状腺摘出術)です。根治治療となるため日々の投薬が必要なくなり、長寿や生活の質の向上が期待できます。手術の場合は猫ちゃんの年齢や一般状態、麻酔に対するリスクや、腎機能の状態、併発疾患の重症度等を考慮し慎重に考える必要があり、進行しすぎた症例ではリスクが高くなります。甲状腺摘出後に残ったほうの甲状腺の機能が十分でない場合は甲状腺機能低下症がみられることもあります。徐々に回復する場合もありますが、場合によっては甲状腺ホルモンの補充療法が必要になる場合もあります。

三つめは放射性ヨウ素治療ですが、現在日本では実施不可能であるため今回はご紹介だけさせていただきます。

 

5、最後に

甲状腺機能亢進症は10歳以上の高齢猫に多く認められ、無治療で放置すると寿命が著しく短縮されますが、適切な治療を行うことで長期の延命効果を図ることができる病気です。この病気は「高齢猫が食べるのに痩せてくる」「ニャーニャー良く鳴いて落ち着きがない」等の特徴があります。何か気になる症状があれば是非一度診察へいらしてください。

 

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