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2020.08.07
ワンちゃんの病気整形外科
ワンちゃんの膝蓋骨脱臼って?

こんにちは。野並どうぶつ病院の病院ブログをご覧いただきありがとうございます。このブログではワンちゃん、ネコちゃんの病気や病院で行っている手術についてご紹介していきます。今日は「膝蓋骨脱臼」についてお話しさせていただきます。

 

1、膝蓋骨脱臼って何?

 

 

 

 

膝蓋骨脱臼とは後肢にある膝蓋骨(膝のサラ)が正常な位置から外れてしまった状態をいいます。内側に外れる内方脱臼と外側に外れる外方脱臼がありますが、その発生頻度は圧倒的に内方脱臼が高いです。全ての犬種に発生がみられますが、特に内方脱臼はトイプードル、チワワ、ヨークシャーテリア、ポメラニアンなどの小型犬種に多くみられ小型犬の発生リスクは大型犬の12倍ともいわれています。外方脱臼は大型の犬種に稀にみられることがあります。膝蓋骨脱臼は猫ちゃんでもみられるこがありますが、ワンちゃんほど一般的ではありません。膝蓋骨を英語でpatella(パテラ)ということから、膝蓋骨脱臼を「パテラ」と呼ぶこともあります。

 

 

2、なぜ膝蓋骨の脱臼がおきるの??

 

先天性と後天性に分けられます。先天性のものでは出生時から膝関節や膝関節周囲にみられる異常が存在することによってそれが加齢とともに進行し、膝蓋骨の脱臼を招きます。後天性のものでは打撲や落下などによる外傷性の原因で膝蓋骨周囲の組織に損傷が生じる場合や、骨に関連する栄養障害などによって骨の変形が生じた結果発生します。

 

 

3、分類

 

膝蓋骨脱臼の症状はその程度により無症状のものから正常な歩行が困難なものまで幅広くあります。それらはグレードⅠからグレードⅣまで重症度によって分類されます。

 

<重症度分類>

グレードⅠ:膝蓋骨は正常な位置にあり、足を伸展させて膝蓋骨を指で押すと脱臼するが、放すと自然に修復される。無症状の場合が多いが、ときにスキップ様の歩行をする。

 

グレードⅡ:膝関節は不安定で屈曲していると脱臼し跛行したりするが、指で膝蓋骨を押すと整復できる。日常生活に支障がないことが多いが、さまざまな症状を呈しながらも骨の変形が進み、膝蓋骨を支える靭帯が伸びてステージⅢに移行してしまう危険性がある。

 

グレードⅢ:膝蓋骨は常に脱臼状態にあり、指で押せば整復できるがすぐに脱臼してしまう。

顕著な跛行がみられる。

 

グレードⅣ:膝蓋骨は常に脱臼し、指で押しても整復できない。重症例では膝関節を自力で伸展することができない。

 

 

4、治療法はあるの??

 

治療法はグレードや犬の年齢、犬種、体重、合併症の有無等を考慮して選択しております。外科治療を行わない限り完治はありませんが、内科治療(保存的治療)を勧めるケースもあります。

 

<内科治療(保存的治療)を勧める場合>

  • 6カ月未満の小型犬
  • 成長板が閉鎖した成犬でグレードⅠ,Ⅱ(疼痛なし)
  • 麻酔処置のリスクが高い場合

内科治療では消炎鎮痛剤を短期間使用することによって一時的に関節炎の症状を抑えます。膝関節の構造自体が変化するわけではないので完治は望めませんが、十分にケアすることで再脱臼による関節炎を防ぎ良好に維持できるケースもあります。具体的には重要になるのは体重の管理です。体重の増加は膝に負担をかけるので増やしすぎないように注意します。また病院には関節の健康維持に配慮した食事やサプリメントなどもあるので取り入れるとよいでしょう。痛みがでている場合は、休ませることも重要になるため過激な運動や長時間の散歩は控え自宅で安静に過ごすようにします。

 

<外科治療を勧める場合>

当院では疼痛があるグレードⅡ~Ⅲ以上のケースでは積極的に外科手術をすすめています。グレードⅡ以下では十分な経過観察を行いますが、慢性的な膝蓋骨脱臼は前十字靭帯断裂の要因になることも報告されているため、変形性関節症を含めた予防的な処置を希望される場合は早期に外科的治療を行っています。細かな手術法は症例により異なりますので、ここでは省略させていただきます。また手術後の安静と適切なリハビリも大切です。ワンちゃんの性格や退院後の自宅での生活も含めてよく検討してから手術を受ける必要がありますので、獣医師とご相談ください。

 

 

5、最後に

 

膝蓋骨脱臼はなるべく早期に発見し、関節や靭帯、骨の変形などの二次的な問題が出る前に適切な治療を選択することが重要です。人気の小型犬種の多くは膝蓋骨脱臼の好発犬種です。特に気になる症状がない場合でもワクチン接種時など日頃から定期的に膝の状態を見てもらっておくと安心です。

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