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2020.10.22
ネコちゃんの病気ワンちゃんの病気
犬の咳の原因は?

 こんにちは。野並どうぶつ病院の病院ブログをご覧いただきありがとうございます。このブログではワンちゃん、ネコちゃんの病気や病院で行っている手術についてご紹介していきます。

今日はワンちゃんの咳についてお話しをします。咳がでる原因は色々考えられます。心臓病や気管支炎、気管虚脱、ケンネルコフ等様々な原因が考えられます。今日はその中でも「気管虚脱」という病気についてお話ししたいと思います。

 

 

1、気管虚脱ってどんな病気?

気管虚脱は、肺への空気の出し入れを行う気管が途中でつぶれてしまい呼吸が出来なくなる病気です。気管虚脱は日常的に遭遇する代表的な犬の呼吸器疾患の一つです。中年齢のトイ種、ミニチュア種に多く、もっとも一般的な犬種はトイプードル、ヨークシャーテリア、ポメラニアン、マルチーズ、パグ、チワワなどでみられます。気管虚脱の詳しい原因は不明ですが、軟骨が歪んだために気管が潰れたような形になり異常な呼吸音がしたりひどくなると呼吸困難になることもある病気です。

 

 

2、どんな症状がおきますか?

最も特徴的なのはアヒル様呼吸音「ガーガー」とよばれる異常呼吸音です。軽度では特に症状が認められませんが進行してくるとアヒル様呼吸音および呼吸困難を呈し、重症化すると呼吸停止を引き起こして死に至ることもあります。咳は興奮時、運動時、摂食時、首輪による圧迫時にしばしば顕著に発現します。1日中咳が続くと運動不耐や睡眠障害を起こし、食欲や元気が消失するなど全身状態が悪化するなどの症状がみられます。

 

 

3、どのような検査を行いますか?

主に単純X線検査により診断しています。単純X線検側方撮影を吸気時と呼気時で行い気管径や分岐部を含む気管支径などを評価し、グレードの分類を行っています。正常な気管軟骨では吸気時と呼気時の撮影において画像上の気管径に変化は見られませんが、気管軟骨が脆弱な気管虚脱では頸部気管虚脱では吸気時に、胸腔内気管虚脱においては呼気時にそれぞれ虚脱します。診断精度は気管支鏡検査やX線透視検査のほうが高いためより高度な検査を行う場合は二次病院をご紹介しています。

 

<気管虚脱の重症度は4段階にグレード分類>

グレードⅠ:最も軽症です。内腔の25%以下の狭窄がみられる

グレードⅡ:内腔の25-50%の狭窄しており気管軟骨は軽度扁平化

グレードⅢ:内腔の50-75%の狭窄しており気管軟骨は重度に扁平化

グレードⅣ:最も重症です。内腔の完全消失または完全虚脱。膜性壁は底部に接する。

 

 

4、治療法はありますか?

内科治療と外科治療があります。

<内科治療>

グレードⅠ、Ⅱで症状が軽度の場合は内科治療(鎮咳、抗炎症、鎮静、体重管理、環境管理)を行います。しかし内科治療では脆弱となった気管軟骨を治すことできません。その為お薬を服用しても根治治療ではなく、咳や呼吸困難に対する緩和治療が主になります。この病気は進行性の疾患であることから治療に対して反応が徐々に悪くなる可能性が高くなります。首輪から胴輪への切り替えや肥満犬であればダイエットを行うことで症状の緩和が見られます。また環境管理も重要で高温多湿の環境下では呼吸数の増加を招き臨床徴候を誘発するので部屋の温度や湿度に注意する必要があります。

 

<外科治療>

内科治療に反応がみられない、アヒル様の呼吸音や呼吸困難が2週間以上継続、グレードⅢ以上に進行している症例に対しては外科治療を勧めています。外科治療の方法として人工物を気管内に挿入するステント法あるいは気管外に巻き付けるプロテーゼ法があります。手術法によっては当院で対応できない場合もございますので、その場合は病院を紹介させていただきます。

ステント法は、気管の虚脱部にステントを挿入する治療です。ステントとは、体内の管状の部分を内側から広げるための器具のことです。気管内ステント設置術は切開がない分、手術中のダメージが少ないことが大きなメリットです。デメリットは気管の内側に異物が設置されているので、術後に異物感を感じやすく、咳が出てしまうケースもあるということです。またステントを設置した場合、定期的な気管内視鏡検査やネブライジング(薬剤を霧状にして気道内に吸入させる)が必要になります。

気管外のプロテーゼ法は、のどを切開し、気管の外側にプロテーゼを縫いつけて気管を広げる方法です。プロテーゼ設置のために切開が必要になるのですが、気管内に異物がない状態になるため術後に異物感や刺激が残りません。

 

 

5、最後に

犬の気管虚脱は、小型犬に多く見られる病気です。息苦しそうだったり、異常な呼吸音を発したりしていたら、すぐに獣医師にご相談ください。また軽症であっても急激に悪化する場合もありますので注意が必要です。

 

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