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2021.03.29
ネコちゃんの病気ワンちゃんの病気
ワンちゃん、ネコちゃんの食欲増進剤について

こんにちは。野並どうぶつ病院の病院ブログをご覧いただきありがとうございます。今日は病院で使用されている食欲増進剤についてのお話しをしたいと思います。

 

様々な工夫を施しても食事をとらないワンちゃんやネコちゃんに対して食欲増進剤を投与することがあります。よく用いられる食欲増進剤としてシクロへプタジン塩酸塩水和物(製品名:ペリアクチン)、ミルタザピン(製品名:レメロン)、抗てんかん薬であるジアゼパム(製品名:セルシン、ホリゾン)、新薬のカプロモレリン(製品名:エンタイス)などがあります。特にミルタザピンは日本では錠剤のみが流通していますが海外では注射薬や外用薬(軟膏)もあり耳介に塗ることができるため、食欲不振のネコちゃんにも使いやすく注目が高まっています。当院でも海外から外用薬を輸入し使用しています。本日はワンちゃんやネコちゃんで使用されている食欲増進剤の種類、各特徴について説明していきたいと思います。

 

 

1、はじめに

まずはじめにお伝えしたいことは、食欲増進剤は万能薬ではなく基礎疾患の治療が成功しなければ薬物単独で食欲を正常化させることは難しいということです。一般的には薬物による食欲増進効果の持続時間は短く補助的な手段にすぎず、胃瘻や食道チューブ設置などによる真の栄養補助療法とは異なることを認識する必要があります。また様々な食欲増進剤がワンちゃんやネコちゃんで使用されていますが、これらの多くは薬剤本来の効果ではなく、副作用による食欲の増進を利用したものになります。そのため薬剤によってそれぞれ特徴があり、副作用の出方もかわります。

 

2、食欲増進剤の種類

①ジプロへプタジン(製品名:ペリアクチン)(犬・猫)

【作用・特徴】

抗ヒスタミン作用により蕁麻疹、花粉症、喘息などによる皮膚の腫れや痒みなどの症状を改善する抗アレルギー薬です。ワンちゃんではネコちゃんよりも急速に代謝排泄されるため食欲増進剤としての効果は弱いと言われています。副作用には攻撃性の亢進、遠吠え、行動の変化などがあります。これらの兆候は容量を減量または投薬を中止すれば改善することが多いと言われています。

 

②ミルタザピン(製品名:レメロン)(猫)

【作用・特徴】

レメロンという商品名で日本では人体薬として錠剤が流通しています。ノルアドレナリン・セロトニン作動性の抗うつ剤で、人医療ではうつ病の治療に用いられています。海外では注射薬や外用薬(軟膏)もありますが日本では流通しておらず、現在病院で使用している外用薬(軟膏)は海外から輸入しています。近年ではレメロンは食欲増進剤として人の癌関連性悪液質および加齢性筋肉量減少症などに幅広く使用され、獣医療においても同様の目的で使用されています。ネコちゃんの場合、外用薬(軟膏)を一日一回耳介にぬることで経皮的に吸収され作用を発揮します。入院中のネコちゃんについて行われたある研究では、ミルタザピンの投与により80%以上の猫において食欲の増進効果が認められたそうです。ただし、用量に個体差があるため感受性が高いネコちゃんでは投与後に若干ソワソワしたり興奮したり、夜鳴き、徘徊という行動や性格の変化を伴うこともあります。お薬の効果が切れれば元に戻ります。

 

 

③ジアゼパム(製品名:ホリゾン、セルシン)(犬)

【作用・特徴】

ベンゾジアゼピン系の薬剤で静脈内投与または経口投与によって食欲増進効果がみとめられます。静脈内投与した場合には食欲増進効果の持続時間は数秒で現実的には食欲増進剤としての実用性は低いため、経口薬で使用します。強い鎮静効果があるため衰弱状態や重症疾患の動物には利用できません。またネコちゃんに繰り返し投与すると重度の肝不全に進行する可能性があるため積極的な使用は推奨できません。

 

④カプロモレリン(製品名:エンタイス)(犬)

【作用・特徴】

米国で「空腹ホルモン」とよばれるグレリンの作用と類似した作用をもつ新たな犬の食欲増進剤が米国医薬品局(FDA)で認可され、2017年より販売されました。上記でご紹介した薬は副作用で食欲増進させるというものでしたが、エンタイスは副作用ではなく主作用として犬の食欲増進作用を示すものとして承認を受けた薬です。甘いにおいのする薬なので苦手な子はよだれがでたりしますが、あまり嫌がらずに飲んでくれる子もいます。日本での販売はしておらず、当院では海外より薬を輸入して使用しています。

 

 

3、最後に

ワンちゃんやネコちゃんに食欲増進効果のある薬剤について紹介しました。先ほども述べたように原疾患の治療がされなければ、食欲増進剤を使用しても食欲が維持できません。しかし高齢猫に多い慢性腎臓病や腫瘍性疾患、食欲不定の糖尿病のような病態に対しては食欲増進剤は一定の効果を発揮し、延命効果も認められます。何とか食べて体重を維持するというのはとても重要なことで、例えば腎不全治療中の猫ちゃんが食欲低下によりいったん体重が減ってしまうと、体重をまた盛り返すのはけっこう大変なことなのです。食欲が落ちて体重が減り気味の子には積極的に投与を検討してみてもいいでしょう。その子に合わせたお薬を処方しますので一度病院でご相談ください。

2020.12.30
ワンちゃんの病気内分泌科
ワンちゃんの甲状腺機能低下症について

こんにちは。野並どうぶつ病院の病院ブログをご覧いただきありがとうございます。このブログではワンちゃん、ネコちゃんの病気や病院で行っている手術についてご紹介していきます。今日は「甲状腺機能低下症」とういうワンちゃんの病気についてお話しをします。前回お話しした猫ちゃんの「甲状腺機能亢進症」とは逆に甲状腺ホルモンが減少する病気です。

 

まず初めに甲状腺は喉のやや下の左右にあり、代謝に重要な甲状腺ホルモンを分泌する臓器です。生命の維持に極めて重要な役割を担っています。甲状腺機能低下症では甲状腺ホルモンの分泌が減少することによって元気がなくなったり、脱毛、肥満傾向、寒がるなどの様々な症状がみられます。中高齢のわんちゃんではクッシング症候群に次いで多くみられる内分泌疾患の一つです。

 

1、「甲状腺機能低下症」ってどんな病気?

甲状腺機能低下症のほとんどは甲状腺そのものに異常がある原発性甲状腺機能低下症です。下垂体からの甲状腺刺激ホルモン(TSH)分泌低下による二次性甲状腺機能低下症は稀であると考えられています。原発性甲状腺機能低下症を引き起こす原因として、免疫が関わっているようなリンパ球甲状腺炎や原因がよくわからない特発性甲状腺委縮、甲状腺の腫瘍等があります。犬種としてはゴールデン・レトリーバー、ラブラドール・レトリーバー、ドーベルマンでの発生が多いと報告されています。

 

2、どのような症状がおきますか?

よくみられる症状としては内分泌性脱毛、色素沈着、ラットテール、難治性の膿皮症、外耳炎、角化異常などの皮膚徴候、肥満、活動性の低下、悲劇的顔貌、徐脈等が挙げられます。その他には発生頻度は低くなりますが、顔面神経麻痺、ナックリング、前庭障害などの末梢神経障害も起こります。まれに昏睡、虚脱を引き起こす粘液水腫性昏睡が発生することがあります。

 

3、どのような検査を行いますか?

血液検査や甲状腺ホルモン濃度の測定を行います。血液検査では軽度の非再生性貧血がみられることがあります。また血液生化学検査では甲状腺機能低下症の犬のうち75%で高コレステロール血症が見られると報告されています。甲状腺機能低下症では血中チロキシン(T₄)濃度および血中遊離T₄(fT₄)濃度が低値となります。診断におけるT₄およびfT₄の感度は高いため、これらの数値が基準範囲内であった場合、甲状腺機能低下症の可能性は低くなります。ただし甲状腺の病気でない他の重度な病気の場合でも甲状腺ホルモン濃度は低下することがあり、誤診を招くことがあります。その場合にfT₄のほうが非甲状腺疾患の影響を受けにくいとされているのでT₄だけでなくfT₄の測定も行うことが重要です。また血中TSH濃度が高値であった場合には甲状腺機能低下症の可能性が高くなるためT₄またはfT₄、TSHの測定を組み合わせることで診察の特異度は向上します。超音波検査も有用で、甲状腺機能低下症の犬の甲状腺は正常な犬よりも小さくなります。ただし甲状腺の大きさは体格によって異なるため、犬種ごとの基準と比較する必要があります。

 

4、治療法はありますか?

甲状腺ホルモン欠乏による疾患であるため甲状腺ホルモンの補充療法を行います。一般的にはレボチロキシンナトリウム製剤を用います。活動性低下や高脂血症などは投与開始から1-2週間のうちに改善の傾向がみられることが多いですが、皮膚や神経徴候などは改善に数週間~数か月を要する可能性があります。治療を開始してからは血液検査も定期的に行い、お薬の投与量が適正に保たれているか見ていく必要があります。投与量が多すぎると頻脈や興奮等の症状がでることもあるため注意が必要です。また甲状腺腫瘍が原因の甲状腺機能低下症では外科的治療(手術)や放射線療法、化学療法も考慮して治療を選択します。

 

5、最後に

原発性の甲状腺機能低下症は適切に診断、治療が行われれば予後は良好です。早期発見、早期治療が大切となります。また低下した甲状腺の機能が回復することはないため生涯にわたるレボチロキシンナトリウム製剤の投与が必要です。中年齢のワンちゃんで増えてくる病気です。本日説明したような症状や気になることがあれば一度病院にいらしてください。

 

年内最後のブログになります。来年度も引き続きワンちゃんやネコちゃんの病気や日常ケアについてのお話しを書かせていただきますので引き続きよろしくお願い致します。

2020.12.08
ワンちゃんの病気循環器科
ワンちゃんに多い心臓病

 こんにちは。野並どうぶつ病院の病院ブログをご覧いただきありがとうございます。このブログではワンちゃん、ネコちゃんの病気や病院で行っている手術についてご紹介していきます。今日は「僧帽弁閉鎖不全症」とういうワンちゃんで比較的多くみられる心臓の病気についてお話しをします。

 

僧帽弁閉鎖不全症は全ての犬種でみられますがとくに中年齢以上のマルチーズ、シーズー、ポメラニアン、プードル、キャバリアキングチャールズスパニエル、チワワなどに多発し4~5歳齢をピークに加齢とともに発生が増加するといわれています。雄は雌の1.5倍の罹患率をもつといわれています。心臓病というのは初期には目立った症状がないため、なかなか気づきにくく症状が現れるころにはひどくなっているケースがほとんどです。

 

 

1、原因は?

僧帽弁とは心臓の左心房と左心室の間に位置する二枚の薄い弁のことです。心臓が収縮したさいに心房と心室を閉鎖し左心房への血液の逆流を防ぐ役割を果たしています。僧帽弁閉鎖不全症ではこの弁が粘液変性によって肥厚し、うまく閉まらなくなると血液が左心室から左心房へ逆流します。僧帽弁がうまく閉じなくなると血液の一部が逆流してしまうことで全身へうまく血液が送り出せなくなります。初期の段階では心臓が頑張って働くことにより全身に大きな影響はありませんが、この状態が長く続き限界をむかえると心不全の状態になります。また弁を支持している腱索が断裂して急激に症状が悪化する場合もあり、その時は急死する可能性もあります。

 

 

2、どんな症状がおきますか?

僧帽弁における血液の逆流が軽度の場合には循環状態や心臓の形態に大きな影響を与えることはないため臨床症状(咳や運動不耐性)の発現や心拡大などの異常所見はみられません。時間の経過とともに僧帽弁や腱索および乳頭筋などの障害は進行し同時に逆流量も増加することで左心房は拡張してきます。左心房の拡張が進行すると背側に位置する気管支が物理的に圧迫され興奮したときや運動したときに咳がでるようになります。咳は多く認められる症状の一つなので咳を頻繁にするようになった場合は注意が必要です。自宅でも心拍数や呼吸数、食欲の変化や散歩の様子等を確認し、変化がないかを見ていく必要があります。また心不全が悪化し、肺に水が溜まる「肺水腫」になった場合は緊急性が高く命に関わります。

 

 

 

3、診断

身体検査が重要となり心雑音が聴取されることがほとんどです。発咳や以前よりも疲れやすくなった等の行動の変化や呼吸状態に異常がないか確認をします。その他にはX線検査や超音波検査が重要となります。X線検査では心陰影(特に左心系)の拡大や肺野の不透過性の亢進、気管支の圧迫等を確認します。超音波検査では弁の逆流や腱索の状態、心房や心室の肥大を確認します。また場合により血圧測定や心電図検査によってより詳細な病態を把握することができます。

 

 

4、どのような治療を行いますか?

臨床症状や検査結果によって重症度を評価し、その段階にあった治療を行っていきます。主に食事療法や内服薬としてアンギオテンシン変換酵素阻害剤や強心薬、血管拡張薬、B遮断薬、状態によっては利尿剤の投与を行います。基本的に一生投薬が必要になります。根治治療としては心臓外科手術になり、僧帽弁の修復術が有効な方法だとは考えられています。しかし手術が適応にならないタイプの心不全や持病(腎不全や重度の肝障害等)がある場合は手術は慎重に考える必要があります。また手術費用も高額になります。対応できる病院は限られていますので希望される場合はご紹介させていただきます。

 

 

5、最後に

僧帽弁閉鎖不全症は加齢ともに増加する犬の代表的な心疾患です。心臓病というのは初期には目立った症状がないため、なかなか気づきにくく症状が現れるころにはひどくなっているケースがほとんどです。症状がない場合でも定期的に病院を受診し、聴診で異常がないかみてもらいましょう。異常がある場合や、症状があれば検査をお勧めします。何か不安なことや聞きたいことがあれば一度病院にいらしてください。

2020.11.16
ワンちゃんの病気眼科
犬の白内障について

 

 こんにちは。野並どうぶつ病院の病院ブログをご覧いただきありがとうございます。このブログではワンちゃん、ネコちゃんの病気や病院で行っている手術についてご紹介していきます。今日はわんちゃんの「白内障」についてお話しをしたいと思います。

 

 

白内障は水晶体の一部または全部が白濁する病気で、その程度が進めば進むほど白く濁りそれにより視力に影響が出てしまう病気です。眼球の中のレンズ(水晶体)は主として水とタンパク質から構成されており、通常は透明です。原因は未だ不明な点が多いのですが、何らかの原因でこの水晶体のタンパク質分子の構成が乱されると透明性が維持できなくなって白濁します。白濁した状態は元の状態に戻ることはありません。この状態を白内障とよびます。

 

 

1、犬の白内障ってどんな病気?

犬の白内障は人間と異なる点が多くあり、そのことを知っていただく事が治療や早期発見の第一歩となります。人の白内障の原因は加齢によるものが多いと考えられていますが、犬の場合は若くして白内障になることがあります。1~6歳齢で発症するものを若年性白内障、犬では6~8歳齢以上で発症するものを老年性白内障と呼びます。そして犬には白内障になりやすい犬種があります。コッカ-スパニエル、プードル、ビーグル、アフガンハウンド、シーズー、柴犬、チワワなどで発生が多いと報告されています。また白内障は混濁の程度により①初発白内障②未成熟白内障③成熟白内障④過熟白内障に分類されます。

 

①初発白内障・・・水晶体線維の一部やごく限られた部位に発生。日常の動作には変化がなく家族が気づくことは少ない。

②未成熟白内障・・・水晶体全体が混濁していない状態でなおかつ眼底からの反射がみとめられるもの。白内障が片側の場合でも日常の動作が鈍くなっていることがあり、家族が気づくこともある。

③成熟白内障・・・水晶体全体が完全に混濁している状態で眼底からの反射は認められない。両眼性の場合には物にぶつかる、鼻を床にこすりつけるようなしぐさで歩くなどの異常な行動が認められる。片眼性の場合には日常生活に異常が認められない場合もある。

④過熟白内障・・・成熟白内障がさらに進行して水晶体内容物が液化した状態。

 

 

2、犬の白内障の原因は?

水晶体のタンパク質が変化し濁りが出ることによって白内障は起こります。原因は大きく分けて次の2つです。

  • 先天性白内障

遺伝的素因によるもの

  • 後天性白内障

老齢性、代謝性(糖尿病、低カルシウム血症)、外傷性、続発性(緑内障、ぶどう膜炎、水晶体脱臼等)、中毒性、放射線、感電などによるもの

 

 

3、犬の白内障の治療法にはどんなものがありますか?

<内科療法>

現在行われている内科療法(点眼剤療法)は白内障の進行を遅延させる、あるいは視覚を補助するために用いているものであり白内障自体を治癒させるものではありません。またその対象は初発白内障から未成熟白内障でありそれ以外の白内障は内科療法の適応となりません。白内障の治療薬として処方している点眼剤はピレノキシンです。ピレノキシンは水晶体の蛋白変性の抑制や過酸化脂質生成の抑制等さまざまな作用により水晶体の混濁を遅延させる効果があります。

 

<外科療法>

白内障の唯一の治療法は白濁した水晶体を外科的に摘出することです。当院では白内障の手術は行っておりませんので眼科専門病院を紹介させていただきます。現在行われている白内障手術の主流は超音波水晶体乳化吸引術および眼内レンズ挿入術です。この手術の利点は小切開創から水晶体の乳化吸引ができることで折りたたみ式の眼内レンズを用いれば切開創を大きく拡大することなく眼内レンズを眼内に挿入でき眼にとっては負担の少ない手術法といえます。ただし犬の眼は非常にデリケートなため術後に合併症を発生する確率が高いという事実があります。白内障手術を成功させるためには家族の協力の下、術後の点眼、内服、定期的な通院などが必要になり、合併症が出てくる可能性が一定程度あることを予め認識しておく必要があります。

 

 

4、最後に

白内障にならないための予防方法は特にありません。人とは違い、若い子でも白内障がおこることはあるので注意してください。早期に発見できれば内科療法で進行を遅らせたり、手術によって視力を回復できる可能性は高くなります。愛犬の目の様子や行動に注意して気になることがあればすぐに病院を受診するようにしましょう。

2020.10.22
ネコちゃんの病気ワンちゃんの病気
犬の咳の原因は?

 こんにちは。野並どうぶつ病院の病院ブログをご覧いただきありがとうございます。このブログではワンちゃん、ネコちゃんの病気や病院で行っている手術についてご紹介していきます。

今日はワンちゃんの咳についてお話しをします。咳がでる原因は色々考えられます。心臓病や気管支炎、気管虚脱、ケンネルコフ等様々な原因が考えられます。今日はその中でも「気管虚脱」という病気についてお話ししたいと思います。

 

 

1、気管虚脱ってどんな病気?

気管虚脱は、肺への空気の出し入れを行う気管が途中でつぶれてしまい呼吸が出来なくなる病気です。気管虚脱は日常的に遭遇する代表的な犬の呼吸器疾患の一つです。中年齢のトイ種、ミニチュア種に多く、もっとも一般的な犬種はトイプードル、ヨークシャーテリア、ポメラニアン、マルチーズ、パグ、チワワなどでみられます。気管虚脱の詳しい原因は不明ですが、軟骨が歪んだために気管が潰れたような形になり異常な呼吸音がしたりひどくなると呼吸困難になることもある病気です。

 

 

2、どんな症状がおきますか?

最も特徴的なのはアヒル様呼吸音「ガーガー」とよばれる異常呼吸音です。軽度では特に症状が認められませんが進行してくるとアヒル様呼吸音および呼吸困難を呈し、重症化すると呼吸停止を引き起こして死に至ることもあります。咳は興奮時、運動時、摂食時、首輪による圧迫時にしばしば顕著に発現します。1日中咳が続くと運動不耐や睡眠障害を起こし、食欲や元気が消失するなど全身状態が悪化するなどの症状がみられます。

 

 

3、どのような検査を行いますか?

主に単純X線検査により診断しています。単純X線検側方撮影を吸気時と呼気時で行い気管径や分岐部を含む気管支径などを評価し、グレードの分類を行っています。正常な気管軟骨では吸気時と呼気時の撮影において画像上の気管径に変化は見られませんが、気管軟骨が脆弱な気管虚脱では頸部気管虚脱では吸気時に、胸腔内気管虚脱においては呼気時にそれぞれ虚脱します。診断精度は気管支鏡検査やX線透視検査のほうが高いためより高度な検査を行う場合は二次病院をご紹介しています。

 

<気管虚脱の重症度は4段階にグレード分類>

グレードⅠ:最も軽症です。内腔の25%以下の狭窄がみられる

グレードⅡ:内腔の25-50%の狭窄しており気管軟骨は軽度扁平化

グレードⅢ:内腔の50-75%の狭窄しており気管軟骨は重度に扁平化

グレードⅣ:最も重症です。内腔の完全消失または完全虚脱。膜性壁は底部に接する。

 

 

4、治療法はありますか?

内科治療と外科治療があります。

<内科治療>

グレードⅠ、Ⅱで症状が軽度の場合は内科治療(鎮咳、抗炎症、鎮静、体重管理、環境管理)を行います。しかし内科治療では脆弱となった気管軟骨を治すことできません。その為お薬を服用しても根治治療ではなく、咳や呼吸困難に対する緩和治療が主になります。この病気は進行性の疾患であることから治療に対して反応が徐々に悪くなる可能性が高くなります。首輪から胴輪への切り替えや肥満犬であればダイエットを行うことで症状の緩和が見られます。また環境管理も重要で高温多湿の環境下では呼吸数の増加を招き臨床徴候を誘発するので部屋の温度や湿度に注意する必要があります。

 

<外科治療>

内科治療に反応がみられない、アヒル様の呼吸音や呼吸困難が2週間以上継続、グレードⅢ以上に進行している症例に対しては外科治療を勧めています。外科治療の方法として人工物を気管内に挿入するステント法あるいは気管外に巻き付けるプロテーゼ法があります。手術法によっては当院で対応できない場合もございますので、その場合は病院を紹介させていただきます。

ステント法は、気管の虚脱部にステントを挿入する治療です。ステントとは、体内の管状の部分を内側から広げるための器具のことです。気管内ステント設置術は切開がない分、手術中のダメージが少ないことが大きなメリットです。デメリットは気管の内側に異物が設置されているので、術後に異物感を感じやすく、咳が出てしまうケースもあるということです。またステントを設置した場合、定期的な気管内視鏡検査やネブライジング(薬剤を霧状にして気道内に吸入させる)が必要になります。

気管外のプロテーゼ法は、のどを切開し、気管の外側にプロテーゼを縫いつけて気管を広げる方法です。プロテーゼ設置のために切開が必要になるのですが、気管内に異物がない状態になるため術後に異物感や刺激が残りません。

 

 

5、最後に

犬の気管虚脱は、小型犬に多く見られる病気です。息苦しそうだったり、異常な呼吸音を発したりしていたら、すぐに獣医師にご相談ください。また軽症であっても急激に悪化する場合もありますので注意が必要です。

 

2020.10.02
ワンちゃんの病気内分泌科
犬の副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)

こんにちは。野並どうぶつ病院の病院ブログをご覧いただきありがとうございます。このブログではワンちゃん、ネコちゃんの病気や病院で行っている手術についてご紹介していきます。今日は「副腎皮質機能亢進症」という病気についてお話しします。

 

1、副腎皮質機能亢進症ってどんな病気?

副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)とは腎臓のそばにある副腎から分泌される「コルチゾール」というホルモンが出すぎてしまうホルモン異常の病気です。コルチゾールは代謝に関わる重要なホルモンなのですが、それが何らかの原因により過剰に分泌されることで身体に悪影響が出る疾患です。

 

 

 

多飲多尿(水をよく飲み尿量が増える)の症状がでるため、異変に気づき来院されて病気が見つかることが多いですが、何となく元気がない、疲れやすく、毛が抜けるなどの「年齢のせい」と見過ごされがちな症状がでることも多く注意が必要です。今日は犬で比較的多くみられるホルモン異常の病気である「クッシング症候群」についてお話ししたいと思います。

 

 

2、原因はなんですか?

脳下垂体から出るACTH(副腎皮質刺激ホルモン)というホルモンが副腎に働きかけることによって「コルチゾール」を分泌させます。そのため脳下垂体に腫瘍ができてACTHがですぎてしまうと副腎から大量の「コルチゾール」を分泌させてしまいます。また脳下垂体が正常であっても副腎そのものに腫瘍ができることでも「コルチゾール」の分泌は過剰になります。脳下垂体の腫瘍によるもの(PDH)、副腎腫瘍によるもの(AT)の2つの場合がありますが、犬では85%ぐらいが脳下垂体の腫瘍(PDH)が原因と言われています。犬種としてはプードルやダックスフンド、ビーグル、ボストンテリアで発症が多いと言われていますが、すべての犬種でかかる可能性があり特に中高齢犬(8歳以上)がかかりやすい病気です。

 

 

 

3、どんな症状がおきますか?

多飲多尿、多食、腹部膨満、腹部下垂、左右対称の脱毛、皮膚の菲薄化、皮膚の色素沈着、パンティング(呼吸が早いこと)、足腰が弱り歩きたがらない等の症状が起きます。脳下垂体に腫瘍ができている場合は神経症状(徘徊、夜鳴き等)を併発することもあります。高齢犬でよくみられる症状のため病気と気づかずに見過ごしてしまう飼い主さんも多いようです。また症状が進行すると免疫力が低下し、皮膚炎や膀胱炎などの感染症にかかりやすくなります。糖尿病を併発することもあり、治療が遅れて症状が悪化した場合は命に関わります。

 

 

4、クッシング症候群の診断は?

超音波検査や内分泌学的検査を実施します。超音波検査による副腎の評価ではサイズを確認し、厚みが7~7.5mmを超える場合は肥大と判断します。両側性の場合はPDH、片側性の場合はATを疑い診断を勧めます。副腎皮質機能亢進症を診断するための内分泌学的検査としては当院ではACTH刺激試験を行っています。ACTH刺激後の血中コルチゾール濃度を診断に用い、20~25μg/dl以上(検査機器によって基準は異なる)であれば副腎皮質機能亢進症と診断します。またPDHの場合、副腎のサイズや内分泌的検査だけでは下垂体腫瘍の大きさを推測することは不可能であるため、CTやMRI検査といった画像検査が推奨されます。

 

 

5、どのような治療を行いますか?

脳下垂体に腫瘍がある場合(PDH)と副腎腫瘍の場合(AT)によって治療が異なります。

  • 脳下垂体に腫瘍がある場合(PDH)

外科療法、放射線療法、内科療法に分けられます。直径10mmを超える巨大腺腫の場合には放射線療法や外科療法を第一に検討します。放射線療法は下垂体腫瘍の縮小を目的に行い、腫瘍が切除可能であれば手術を行います。幸い、犬の下垂体腫瘍の多くは直径10mm未満の微小腺腫であることが多いため、内科療法が選択される症例も多くいます。内服薬で副腎から分泌されるコルチゾールを抑えますが根本的な治療ではないため生涯薬を飲み続ける必要があります。

 

  • 副腎腫瘍の場合(AT)

第一選択は外科的な副腎摘出です。しかし近接する大きな血管への浸潤や遠隔転移(肺、肝臓、リンパ節)などによって外科的な治療が困難な場合は動物のQOL改善を目的とした内科療法を実施しています。一般的な内科療法ではトリロスタン(アドレスタン)を使用しますが、ATに対するトリロスタンの感受性はPDHと比べて高いことから一般的には低用量から開始し副作用のリスクを軽減し使用していきます。服用してからも症状や体調をみながら内服の量を調整していく必要があり、生涯薬を飲み続ける必要があります。

 

 

6、最後に

クッシング症候群は高齢になると増えてくる病気です。多飲多尿など気になる症状がある場合は一度病院への受診をお勧めします。

2020.08.07
ワンちゃんの病気整形外科
ワンちゃんの膝蓋骨脱臼って?

こんにちは。野並どうぶつ病院の病院ブログをご覧いただきありがとうございます。このブログではワンちゃん、ネコちゃんの病気や病院で行っている手術についてご紹介していきます。今日は「膝蓋骨脱臼」についてお話しさせていただきます。

 

1、膝蓋骨脱臼って何?

 

 

 

 

膝蓋骨脱臼とは後肢にある膝蓋骨(膝のサラ)が正常な位置から外れてしまった状態をいいます。内側に外れる内方脱臼と外側に外れる外方脱臼がありますが、その発生頻度は圧倒的に内方脱臼が高いです。全ての犬種に発生がみられますが、特に内方脱臼はトイプードル、チワワ、ヨークシャーテリア、ポメラニアンなどの小型犬種に多くみられ小型犬の発生リスクは大型犬の12倍ともいわれています。外方脱臼は大型の犬種に稀にみられることがあります。膝蓋骨脱臼は猫ちゃんでもみられるこがありますが、ワンちゃんほど一般的ではありません。膝蓋骨を英語でpatella(パテラ)ということから、膝蓋骨脱臼を「パテラ」と呼ぶこともあります。

 

 

2、なぜ膝蓋骨の脱臼がおきるの??

 

先天性と後天性に分けられます。先天性のものでは出生時から膝関節や膝関節周囲にみられる異常が存在することによってそれが加齢とともに進行し、膝蓋骨の脱臼を招きます。後天性のものでは打撲や落下などによる外傷性の原因で膝蓋骨周囲の組織に損傷が生じる場合や、骨に関連する栄養障害などによって骨の変形が生じた結果発生します。

 

 

3、分類

 

膝蓋骨脱臼の症状はその程度により無症状のものから正常な歩行が困難なものまで幅広くあります。それらはグレードⅠからグレードⅣまで重症度によって分類されます。

 

<重症度分類>

グレードⅠ:膝蓋骨は正常な位置にあり、足を伸展させて膝蓋骨を指で押すと脱臼するが、放すと自然に修復される。無症状の場合が多いが、ときにスキップ様の歩行をする。

 

グレードⅡ:膝関節は不安定で屈曲していると脱臼し跛行したりするが、指で膝蓋骨を押すと整復できる。日常生活に支障がないことが多いが、さまざまな症状を呈しながらも骨の変形が進み、膝蓋骨を支える靭帯が伸びてステージⅢに移行してしまう危険性がある。

 

グレードⅢ:膝蓋骨は常に脱臼状態にあり、指で押せば整復できるがすぐに脱臼してしまう。

顕著な跛行がみられる。

 

グレードⅣ:膝蓋骨は常に脱臼し、指で押しても整復できない。重症例では膝関節を自力で伸展することができない。

 

 

4、治療法はあるの??

 

治療法はグレードや犬の年齢、犬種、体重、合併症の有無等を考慮して選択しております。外科治療を行わない限り完治はありませんが、内科治療(保存的治療)を勧めるケースもあります。

 

<内科治療(保存的治療)を勧める場合>

  • 6カ月未満の小型犬
  • 成長板が閉鎖した成犬でグレードⅠ,Ⅱ(疼痛なし)
  • 麻酔処置のリスクが高い場合

内科治療では消炎鎮痛剤を短期間使用することによって一時的に関節炎の症状を抑えます。膝関節の構造自体が変化するわけではないので完治は望めませんが、十分にケアすることで再脱臼による関節炎を防ぎ良好に維持できるケースもあります。具体的には重要になるのは体重の管理です。体重の増加は膝に負担をかけるので増やしすぎないように注意します。また病院には関節の健康維持に配慮した食事やサプリメントなどもあるので取り入れるとよいでしょう。痛みがでている場合は、休ませることも重要になるため過激な運動や長時間の散歩は控え自宅で安静に過ごすようにします。

 

<外科治療を勧める場合>

当院では疼痛があるグレードⅡ~Ⅲ以上のケースでは積極的に外科手術をすすめています。グレードⅡ以下では十分な経過観察を行いますが、慢性的な膝蓋骨脱臼は前十字靭帯断裂の要因になることも報告されているため、変形性関節症を含めた予防的な処置を希望される場合は早期に外科的治療を行っています。細かな手術法は症例により異なりますので、ここでは省略させていただきます。また手術後の安静と適切なリハビリも大切です。ワンちゃんの性格や退院後の自宅での生活も含めてよく検討してから手術を受ける必要がありますので、獣医師とご相談ください。

 

 

5、最後に

 

膝蓋骨脱臼はなるべく早期に発見し、関節や靭帯、骨の変形などの二次的な問題が出る前に適切な治療を選択することが重要です。人気の小型犬種の多くは膝蓋骨脱臼の好発犬種です。特に気になる症状がない場合でもワクチン接種時など日頃から定期的に膝の状態を見てもらっておくと安心です。

2020.08.07
ワンちゃんの病気整形外科
小型のワンちゃんの骨折

こんにちは。野並どうぶつ病院の病院ブログをご覧いただきありがとうございます。このブログではワンちゃん、ネコちゃんの病気や病院で行っている手術についてご紹介していきます。今日は骨折についてお話しします。

 

 

 

 

1、小型犬の骨折について

最近人気の小型犬種ではソファーや抱っこからの落下などによって骨折が認められることが多くなっています。橈尺骨骨折(とうしゃっこつこっせつ)は小動物臨床で最も多く遭遇する骨折の一つです。ギブスだけで治すのが困難な場合が多く、手術が必要になります。

小型犬、特にトイ犬種とよばれる超小型犬の橈骨はとても細くもろいので、術後に再骨折してしまったり、プレートが強すぎて骨委縮を起こしたり、癒合不全を起こしてしまう症例もいます。そこで当院では従来のプレート法の欠点を改良しより骨への血行を阻害しないようなロッキングプレートを用いた手術を行っています。

 

 

2、どんな手術をしているの?

 

 

 

従来のプレート法ではスクリュー(ネジ)を骨に押し付ける事で固定していました。そのため骨を強く圧迫することで骨膜の血流を阻害し骨折端の細胞が壊死するなど治療に悪影響を与えるリスクがありました。ロッキングプレートを用いた手術ではプレートとスクリューをロックすることで固定するものでこれまでのプレート法とは全く固定の仕方が違います。プレートが骨から浮いているため骨膜血行の障害が最小限です。骨の周囲には全周で骨膜血行が温存されており、プレート下骨の虚血性変化を防ぐことができるようになりました。プレートは皮膚の下に設置されているので皮膚縫合してしまうと外からは見えません。

 

 

3、術後管理

整形外科手術では術後の管理がどの手術よりも重要になります。手術がうまくいっても術後の管理がうまくいかなければあっという間に固定が破綻してしまい骨癒合に失敗してしまいます。術後はまず2-3週間は包帯を設置し激しい運動は控えてもらいます。元気な動物に運動制限を行うのはとても難しいですが、ケージに入れたり行動範囲を制限して自由に動き回れないようにします。そして定期的な診察には来てもらい、包帯を交換したりレントゲン検査等で術後の経過をみさせていただきます。入れたプレートは抜かずにそのままのことが多いですが、タイミングをみてプレートを抜去する場合もあります。また患肢において筋力の低下がおきているのでリハビリによる筋力アップや食事管理も欠かせません。

2020.01.29
ネコちゃんの病気ワンちゃんの病気生殖器科
子宮蓄膿症ってどんな病気?

こんにちは。野並どうぶつ病院の病院ブログをご覧いただきありがとうございます。このブログではわんちゃん、ねこちゃんの病気や当院で行っている手術についてご紹介していきます。今日はワンちゃんやネコちゃんで比較的多く遭遇する「子宮蓄膿症」という病気についてお話しをします。

 

 

1、はじめに

 

ワンちゃん、ネコちゃんお水をたくさん飲んだり、外陰部から膿のようなものが出ている時は「子宮蓄膿症」かもしれません。

 

 

 

 

2、子宮蓄膿症ってどんな病気?

 

子宮蓄膿症は子宮内腔に膿汁が貯留する病気です。子宮の出口である子宮頸管の状態によって閉鎖性と開放性の2型があります。閉鎖性のものでは子宮頸管が閉じているため子宮は著しく拡張し子宮壁は薄くもろくなります。また卵管から膿汁が腹腔内に漏れ出す危険性があり、膿汁には大腸菌やブドウ球菌等の細菌が含まれているため、致死性の腹膜炎を起こす危険性が増します。一方、開放性のものでは子宮頸管が拡張するため、子宮内の膿汁が外陰部から排膿されます。外陰部から何か膿のようなものがでていると飼い主様が気づかれて来院されるケースがよくあります。

 

 

3、原因は?

 

犬では6歳ごろから多発する傾向があります。猫は犬に比べて子宮蓄膿症の発症は少ないものの若齢期で発症するものもあるので注意が必要です。

本症は発情周期に伴って分泌される黄体ホルモン(プロジェステロン)の関与が大きいことがわかっています。通常犬の膣粘膜のphは酸性に傾いているため子宮内への細菌侵入は生じにくいですが、発情が始まってから1-2か月後の子宮はこの黄体ホルモン(プロジェステロン)の影響によってバランスが崩れ外陰部からの感染がおこりやすいため、子宮内で細菌が増殖し膿汁が貯留します。

 

 

4、どんな症状がおこりますか?

 

一般的には犬では食欲不振、元気消失、発熱、多飲多尿、嘔吐、および腹部膨満が認められます。多飲多尿は様々な病気のサインとして現れることが多いので、もし明らかにお水を飲む量が多かったり排尿の回数が多かったりする場合は病院を受診することをお勧めします。また猫では嘔吐や多飲多尿は顕著ではないこともあるので注意が必要です。開放性の子宮蓄膿症であれば外陰部からの排膿がみられるのでそれで気づく飼い主様も多くいらっしゃいます。

 

 

5、診断や治療はどうするの?

 

血液検査、超音波検査、X線検査を行います。血液検査で白血球の増加や炎症の数値(CRP)の増加がみられることが多いです。また超音波検査、X線検査で液体が貯留し腫大した子宮を確認します。

重篤な状態で動物病院に来院することが多いため救命を考えると外科的に卵巣・子宮全摘出術を行うのが一般的な治療法で最も推奨されます。

また、高齢、麻酔・手術のリスクが高い場合や飼い主様が手術を希望しない場合には内科的治療を行う場合もありますが、内科的治療では治癒に時間がかかったり、必ずしも100%の治癒率ではなく、治ってもまた次の発情後に再発する場合もあります。卵巣腫瘍などを伴ったものでは効果がみられないこともあるので注意が必要です。

 

 

6、最後に

 

ワンちゃんに特に多い「子宮蓄膿症」は場合によっては死に至ることもある恐ろしい病気です。できる限り早期に発見し治療するほど身体への影響も少なくなりますので、生理後二カ月以内に上記にあげた症状がみられる場合は早めに近くの病院を受診してください。

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