のなみブログ

BLOG
2020.12.30
ワンちゃんの病気内分泌科
ワンちゃんの甲状腺機能低下症について

こんにちは。野並どうぶつ病院の病院ブログをご覧いただきありがとうございます。このブログではワンちゃん、ネコちゃんの病気や病院で行っている手術についてご紹介していきます。今日は「甲状腺機能低下症」とういうワンちゃんの病気についてお話しをします。前回お話しした猫ちゃんの「甲状腺機能亢進症」とは逆に甲状腺ホルモンが減少する病気です。

 

まず初めに甲状腺は喉のやや下の左右にあり、代謝に重要な甲状腺ホルモンを分泌する臓器です。生命の維持に極めて重要な役割を担っています。甲状腺機能低下症では甲状腺ホルモンの分泌が減少することによって元気がなくなったり、脱毛、肥満傾向、寒がるなどの様々な症状がみられます。中高齢のわんちゃんではクッシング症候群に次いで多くみられる内分泌疾患の一つです。

 

1、「甲状腺機能低下症」ってどんな病気?

甲状腺機能低下症のほとんどは甲状腺そのものに異常がある原発性甲状腺機能低下症です。下垂体からの甲状腺刺激ホルモン(TSH)分泌低下による二次性甲状腺機能低下症は稀であると考えられています。原発性甲状腺機能低下症を引き起こす原因として、免疫が関わっているようなリンパ球甲状腺炎や原因がよくわからない特発性甲状腺委縮、甲状腺の腫瘍等があります。犬種としてはゴールデン・レトリーバー、ラブラドール・レトリーバー、ドーベルマンでの発生が多いと報告されています。

 

2、どのような症状がおきますか?

よくみられる症状としては内分泌性脱毛、色素沈着、ラットテール、難治性の膿皮症、外耳炎、角化異常などの皮膚徴候、肥満、活動性の低下、悲劇的顔貌、徐脈等が挙げられます。その他には発生頻度は低くなりますが、顔面神経麻痺、ナックリング、前庭障害などの末梢神経障害も起こります。まれに低体温、昏睡、虚脱を引き起こす粘液水腫性昏睡が発生することがあります。

 

3、どのような検査を行いますか?

血液検査や甲状腺ホルモン濃度の測定を行います。血液検査では軽度の非再生性貧血がみられることがあります。また血液生化学検査では甲状腺機能低下症の犬のうち75%で高コレステロール血症が見られると報告されています。甲状腺機能低下症では血中チロキシン(T₄)濃度および血中遊離T₄(fT₄)濃度が低値となります。診断におけるT₄およびfT₄の感度は高いため、これらの数値が基準範囲内であった場合、甲状腺機能低下症の可能性は低くなります。ただし甲状腺の病気でない他の重度な病気の場合でも甲状腺ホルモン濃度は低下することがあり、誤診を招くことがあります。その場合にfT₄のほうが非甲状腺疾患の影響を受けにくいとされているのでT₄だけでなくfT₄の測定も行うことが重要です。また血中TSH濃度が高値であった場合には甲状腺機能低下症の可能性が高くなるためT₄またはfT₄、TSHの測定を組み合わせることで診察の特異度は向上します。超音波検査も有用で、甲状腺機能低下症の犬の甲状腺は正常な犬よりも小さくなります。ただし甲状腺の大きさは体格によって異なるため、犬種ごとの基準と比較する必要があります。

 

4、治療法はありますか?

甲状腺ホルモン欠乏による疾患であるため甲状腺ホルモンの補充療法を行います。一般的にはレボチロキシンナトリウム製剤を用います。活動性低下や高脂血症などは投与開始から1-2週間のうちに改善の傾向がみられることが多いですが、皮膚や神経徴候などは改善に数週間~数か月を要する可能性があります。治療を開始してからは血液検査も定期的に行い、お薬の投与量が適正に保たれているか見ていく必要があります。投与量が多すぎると頻脈や興奮等の症状がでることもあるため注意が必要です。また甲状腺腫瘍が原因の甲状腺機能低下症では外科的治療(手術)や放射線療法、化学療法も考慮して治療を選択します。

 

5、最後に

原発性の甲状腺機能低下症は適切に診断、治療が行われれば予後は良好です。早期発見、早期治療が大切となります。また低下した甲状腺の機能が回復することはないため生涯にわたるレボチロキシンナトリウム製剤の投与が必要です。中年齢のワンちゃんで増えてくる病気です。本日説明したような症状や気になることがあれば一度病院にいらしてください。

 

年内最後のブログになります。来年度も引き続きワンちゃんやネコちゃんの病気や日常ケアについてのお話しを書かせていただきますので引き続きよろしくお願い致します。

2020.12.24
ネコちゃんの病気内分泌科
ネコちゃんの甲状腺機能亢進症について

こんにちは。野並どうぶつ病院の病院ブログをご覧いただきありがとうございます。このブログではワンちゃん、ネコちゃんの病気や病院で行っている手術についてご紹介していきます。今日は「甲状腺機能亢進症」とういうネコちゃんの病気についてお話しをします。

 

 

まず初めに甲状腺は喉のやや下の左右にあり、代謝に重要な甲状腺ホルモンを分泌する臓器です。生命の維持に極めて重要な役割を担っています。甲状腺機能亢進症は甲状腺から過剰な甲状腺ホルモンが分泌されることによって引き起こされる病気です。10歳以上の高齢な猫ちゃんでしばしばみられる慢性腎臓病とならぶ代表的な病気の一つです。今日はそんな猫ちゃんの「甲状腺機能亢進症」という病気についてお話しをします。

 

1、「甲状腺機能亢進症」ってどんな病気?

甲状腺の良性の腺腫性過形成、腺癌によって甲状腺ホルモンが過剰に分泌する疾患です。腺腫性過形成が多く、悪性腫瘍(腺癌など)は2%未満とされています。今現在のところ甲状腺が過形成に発展する真の原因は明確には解明されていません。感染や代謝、環境や遺伝等が相互に作用していると考えられます。

 

2、どんな症状がおきますか?

典型的な症状としては体重減少、多食、活動性の亢進等があり、その他にも被毛の変化や多飲多尿、嘔吐、下痢、頻脈、高血圧といった様々な臨床徴候を示します。その症状は多様ですが、なかでも食欲低下を伴わない体重減少や多飲多尿、活動性の亢進等が特徴的な症状として挙げられます。食事量が低下しないために飼い主様には病気とはとらえにくく、なかなか病気に気づかないこともあります。

 

3、どのような検査を行いますか?

身体検査では脱水や削痩、被毛の変化が見られることが多く、頸部には大きくなった甲状腺を触知することができます。ただし触知できるのは20-30%以下との報告もあるので必ず触知できるわけではありません。また血液検査ではALPやALTといった肝酵素の上昇が多くの症例で認められます。診断は甲状腺ホルモン(血清T₄濃度)を測定します。典型的な症状を伴いT₄濃度が高い場合(5μg/dl)はほぼ甲状腺機能亢進症と診断することができます。また軽度の甲状腺機能亢進症や腫瘍や全身性の感染症、臓器不全では正常な血清T₄濃度を示すこともあり、診断ができないことがあります。そのため一回だけの検査結果では血清T₄濃度が「正常値」を示しても甲状腺機能亢進症を除外することはできません。場合によっては追加のホルモン検査や、間隔をあけて再度数値を測定する必要があります。

 

4、治療法はありますか?

猫の甲状腺機能亢進症の治療法は次の3つに大別されます。

  • 経口抗甲状腺薬
  • 甲状腺摘出手術
  • 放射性ヨード療法

 

一つ目は抗甲状腺薬の経口投与です。抗甲状腺薬を投与し甲状腺機能亢進症により代謝や循環に起こる様々な障害からの回復を図ります。薬の作用は甲状腺ホルモンの合成阻害なので生涯投薬を継続する必要があります。また副作用がでることもあるので定期的に甲状腺ホルモンの測定を行い、症状を観察しながら投与量を調節していく必要があります。また近年ヨードを制限した療法食(ヒルズ社のy/d)の発売によって食餌療法により甲状腺機能亢進症をコントロールするという選択肢も増えましたが、内科治療のほとんどは抗甲状腺薬によって行われています。

二つ目は外科的治療(甲状腺摘出術)です。根治治療となるため日々の投薬が必要なくなり、長寿や生活の質の向上が期待できます。手術の場合は猫ちゃんの年齢や一般状態、麻酔に対するリスクや、腎機能の状態、併発疾患の重症度等を考慮し慎重に考える必要があり、進行しすぎた症例ではリスクが高くなります。甲状腺摘出後に残ったほうの甲状腺の機能が十分でない場合は甲状腺機能低下症がみられることもあります。徐々に回復する場合もありますが、場合によっては甲状腺ホルモンの補充療法が必要になる場合もあります。

三つめは放射性ヨウ素治療ですが、現在日本では実施不可能であるため今回はご紹介だけさせていただきます。

 

5、最後に

甲状腺機能亢進症は10歳以上の高齢猫に多く認められ、無治療で放置すると寿命が著しく短縮されますが、適切な治療を行うことで長期の延命効果を図ることができる病気です。この病気は「高齢猫が食べるのに痩せてくる」「ニャーニャー良く鳴いて落ち着きがない」等の特徴があります。何か気になる症状があれば是非一度診察へいらしてください。

 

2020.10.02
ワンちゃんの病気内分泌科
犬の副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)

こんにちは。野並どうぶつ病院の病院ブログをご覧いただきありがとうございます。このブログではワンちゃん、ネコちゃんの病気や病院で行っている手術についてご紹介していきます。今日は「副腎皮質機能亢進症」という病気についてお話しします。

 

1、副腎皮質機能亢進症ってどんな病気?

副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)とは腎臓のそばにある副腎から分泌される「コルチゾール」というホルモンが出すぎてしまうホルモン異常の病気です。コルチゾールは代謝に関わる重要なホルモンなのですが、それが何らかの原因により過剰に分泌されることで身体に悪影響が出る疾患です。

 

 

 

多飲多尿(水をよく飲み尿量が増える)の症状がでるため、異変に気づき来院されて病気が見つかることが多いですが、何となく元気がない、疲れやすく、毛が抜けるなどの「年齢のせい」と見過ごされがちな症状がでることも多く注意が必要です。今日は犬で比較的多くみられるホルモン異常の病気である「クッシング症候群」についてお話ししたいと思います。

 

 

2、原因はなんですか?

脳下垂体から出るACTH(副腎皮質刺激ホルモン)というホルモンが副腎に働きかけることによって「コルチゾール」を分泌させます。そのため脳下垂体に腫瘍ができてACTHがですぎてしまうと副腎から大量の「コルチゾール」を分泌させてしまいます。また脳下垂体が正常であっても副腎そのものに腫瘍ができることでも「コルチゾール」の分泌は過剰になります。脳下垂体の腫瘍によるもの(PDH)、副腎腫瘍によるもの(AT)の2つの場合がありますが、犬では85%ぐらいが脳下垂体の腫瘍(PDH)が原因と言われています。犬種としてはプードルやダックスフンド、ビーグル、ボストンテリアで発症が多いと言われていますが、すべての犬種でかかる可能性があり特に中高齢犬(8歳以上)がかかりやすい病気です。

 

 

 

3、どんな症状がおきますか?

多飲多尿、多食、腹部膨満、腹部下垂、左右対称の脱毛、皮膚の菲薄化、皮膚の色素沈着、パンティング(呼吸が早いこと)、足腰が弱り歩きたがらない等の症状が起きます。脳下垂体に腫瘍ができている場合は神経症状(徘徊、夜鳴き等)を併発することもあります。高齢犬でよくみられる症状のため病気と気づかずに見過ごしてしまう飼い主さんも多いようです。また症状が進行すると免疫力が低下し、皮膚炎や膀胱炎などの感染症にかかりやすくなります。糖尿病を併発することもあり、治療が遅れて症状が悪化した場合は命に関わります。

 

 

4、クッシング症候群の診断は?

超音波検査や内分泌学的検査を実施します。超音波検査による副腎の評価ではサイズを確認し、厚みが7~7.5mmを超える場合は肥大と判断します。両側性の場合はPDH、片側性の場合はATを疑い診断を勧めます。副腎皮質機能亢進症を診断するための内分泌学的検査としては当院ではACTH刺激試験を行っています。ACTH刺激後の血中コルチゾール濃度を診断に用い、20~25μg/dl以上(検査機器によって基準は異なる)であれば副腎皮質機能亢進症と診断します。またPDHの場合、副腎のサイズや内分泌的検査だけでは下垂体腫瘍の大きさを推測することは不可能であるため、CTやMRI検査といった画像検査が推奨されます。

 

 

5、どのような治療を行いますか?

脳下垂体に腫瘍がある場合(PDH)と副腎腫瘍の場合(AT)によって治療が異なります。

  • 脳下垂体に腫瘍がある場合(PDH)

外科療法、放射線療法、内科療法に分けられます。直径10mmを超える巨大腺腫の場合には放射線療法や外科療法を第一に検討します。放射線療法は下垂体腫瘍の縮小を目的に行い、腫瘍が切除可能であれば手術を行います。幸い、犬の下垂体腫瘍の多くは直径10mm未満の微小腺腫であることが多いため、内科療法が選択される症例も多くいます。内服薬で副腎から分泌されるコルチゾールを抑えますが根本的な治療ではないため生涯薬を飲み続ける必要があります。

 

  • 副腎腫瘍の場合(AT)

第一選択は外科的な副腎摘出です。しかし近接する大きな血管への浸潤や遠隔転移(肺、肝臓、リンパ節)などによって外科的な治療が困難な場合は動物のQOL改善を目的とした内科療法を実施しています。一般的な内科療法ではトリロスタン(アドレスタン)を使用しますが、ATに対するトリロスタンの感受性はPDHと比べて高いことから一般的には低用量から開始し副作用のリスクを軽減し使用していきます。服用してからも症状や体調をみながら内服の量を調整していく必要があり、生涯薬を飲み続ける必要があります。

 

 

6、最後に

クッシング症候群は高齢になると増えてくる病気です。多飲多尿など気になる症状がある場合は一度病院への受診をお勧めします。

TOPへ戻る