こんにちは。野並どうぶつ病院の病院ブログをご覧いただきありがとうございます。このブログではわんちゃん、ねこちゃんの病気や当院で行っている手術についてご紹介していきます。今日はワンちゃんやネコちゃんで比較的多く遭遇する「子宮蓄膿症」という病気についてお話しをします。
1、はじめに
ワンちゃん、ネコちゃんお水をたくさん飲んだり、外陰部から膿のようなものが出ている時は「子宮蓄膿症」かもしれません。
2、子宮蓄膿症ってどんな病気?
子宮蓄膿症は子宮内腔に膿汁が貯留する病気です。子宮の出口である子宮頸管の状態によって閉鎖性と開放性の2型があります。閉鎖性のものでは子宮頸管が閉じているため子宮は著しく拡張し子宮壁は薄くもろくなります。また卵管から膿汁が腹腔内に漏れ出す危険性があり、膿汁には大腸菌やブドウ球菌等の細菌が含まれているため、致死性の腹膜炎を起こす危険性が増します。一方、開放性のものでは子宮頸管が拡張するため、子宮内の膿汁が外陰部から排膿されます。外陰部から何か膿のようなものがでていると飼い主様が気づかれて来院されるケースがよくあります。
3、原因は?
犬では6歳ごろから多発する傾向があります。猫は犬に比べて子宮蓄膿症の発症は少ないものの若齢期で発症するものもあるので注意が必要です。
本症は発情周期に伴って分泌される黄体ホルモン(プロジェステロン)の関与が大きいことがわかっています。通常犬の膣粘膜のphは酸性に傾いているため子宮内への細菌侵入は生じにくいですが、発情が始まってから1-2か月後の子宮はこの黄体ホルモン(プロジェステロン)の影響によってバランスが崩れ外陰部からの感染がおこりやすいため、子宮内で細菌が増殖し膿汁が貯留します。
4、どんな症状がおこりますか?
一般的には犬では食欲不振、元気消失、発熱、多飲多尿、嘔吐、および腹部膨満が認められます。多飲多尿は様々な病気のサインとして現れることが多いので、もし明らかにお水を飲む量が多かったり排尿の回数が多かったりする場合は病院を受診することをお勧めします。また猫では嘔吐や多飲多尿は顕著ではないこともあるので注意が必要です。開放性の子宮蓄膿症であれば外陰部からの排膿がみられるのでそれで気づく飼い主様も多くいらっしゃいます。
5、診断や治療はどうするの?
血液検査、超音波検査、X線検査を行います。血液検査で白血球の増加や炎症の数値(CRP)の増加がみられることが多いです。また超音波検査、X線検査で液体が貯留し腫大した子宮を確認します。
重篤な状態で動物病院に来院することが多いため救命を考えると外科的に卵巣・子宮全摘出術を行うのが一般的な治療法で最も推奨されます。
また、高齢、麻酔・手術のリスクが高い場合や飼い主様が手術を希望しない場合には内科的治療を行う場合もありますが、内科的治療では治癒に時間がかかったり、必ずしも100%の治癒率ではなく、治ってもまた次の発情後に再発する場合もあります。卵巣腫瘍などを伴ったものでは効果がみられないこともあるので注意が必要です。
6、最後に
ワンちゃんに特に多い「子宮蓄膿症」は場合によっては死に至ることもある恐ろしい病気です。できる限り早期に発見し治療するほど身体への影響も少なくなりますので、生理後二カ月以内に上記にあげた症状がみられる場合は早めに近くの病院を受診してください。